ある臨床研究者が、同じ治療法に関する10件の研究結果に直面したとき、矛盾するデータに頭を悩ませていました。「効果あり」と「効果なし」の報告が混在する中、統計的統合の必要性を痛感します。このジレンマは、メタアナリシスが生まれた背景そのものです1

メタアナリシス 結果の解釈

現代の研究統合では、Forest Plotが効果量の分布を直感的に表示します。x軸にリスク比、y軸に信頼区間を配置したグラフは、各研究の重み付けを視覚化します2。例えばI²=29%という低い異質性値は、研究間のばらつきが小さいことを示唆します1

出版バイアスの検出には漏斗プロットが有効です。Eggerの回帰検定(p<0.001)で非対称性を定量化し、Duval & Tweedie法で補正を加える手法が標準的です3。PRISMAフローチャートを用いた研究選定プロセスは、システマティックレビューの透明性を担保します1

主なポイント

  • Forest Plotによる効果量の視覚的比較手法
  • Egger検定と漏斗プロットを用いた出版バイアス検出
  • 異質性評価(I²値)の結果解釈基準
  • PRISMAガイドラインに基づく研究選定フロー
  • Duval & Tweedie法によるデータ補正技術

背景とメタアナリシスの基礎知識

研究手法の進化に伴い、矛盾するデータを統合する革新的アプローチが求められるようになりました。1970年代に開発された統合分析手法は、異分野の研究結果を客観的に比較する枠組みを提供します4。この方法論は、医療から教育分野まで幅広く応用されています。

研究統合の核心手法

効果量の統合には固定効果モデル変量効果モデルが用いられます。前者は均質なデータセットに適し、後者は異質性が認められる場合に選択されます5。社会科学における事例分析では、信頼区間の重なりを指標に研究間の一致性が評価されています。

質と量の協働関係

システマティックレビューが質的評価を基盤とするのに対し、メタアナリシスは統計的統合によってエビデンスの強度を定量化します。環境科学分野では、両手法を組み合わせたハイブリッド型アプローチが気候変動研究で成果を上げています4

文献選定プロセスではPRISMAガイドラインに沿ったスクリーニングが行われます。2018年の神経科学統合研究では、3段階のフィルタリングによって312件から最終28件を選定した事例が報告されています。

メタアナリシス 結果の解釈

異なる研究結果を統合する際、統計的検定が矛盾解消の鍵となります。コクランのQ検定(p<0.05)は研究間の異質性を評価し、Mantel-Haenszel法では固定効果モデル下でのオッズ比統合を可能にします62。2019年の精神医学研究ではQ値32.1(df=9)で有意な異質性が確認され、変量効果モデルへの切り替えが必要と判断された事例が報告されています。

統計的検定の意義

効果量計算ではリスク比や標準化平均差が頻繁に使用されます。具体的な計算式:

指標 計算式 適用条件
オッズ比 (a/b)/(c/d) 二分データ
Hedges’ g (M1-M2)/SDpooled 連続データ

重み付けでは信頼区間の幅が狭い研究に高い重みを付与します。R言語のmetaforパッケージではweights = 1/varianceで自動計算可能です2

効果量の重み付けの基本

固定効果モデルと変量効果モデルの選択基準:

  • I²値>50%の場合:変量効果モデルを適用
  • τ²(タウ二乗)値:真の異質性の推定に活用

教育学研究のメタ分析では、変量効果モデル採用により効果量0.35→0.41へ補正され、より現実的な推定が実現されました6。解析ツール比較ではRevManが初心者向け、Rが高度な分析向けと評価されています。

研究設計とデータ収集の実践ガイド

効果的な研究統合の成否は、対象選定プロセスの厳密さに依存します。文献検索ではPICOS基準(対象/介入/比較/結果/研究デザイン)を用いてクリニカルクエスチョンを定義し、データベース検索式を構築します7。主要5データベース(MEDLINE/EMBASE/CINAHLなど)に加え、灰色文献の探索が網羅性を担保します。

対象研究の選定と登録要件

PROSPERO登録では事前に研究プロトコルを公開し、バイアス低減を図ります8。具体的な選定基準を表に示します:

項目 内容 除外条件
研究デザイン 無作為化比較試験 症例報告
対象者 成人患者 動物実験
言語 英語/日本語 その他

データ収集の具体的手法

文献管理ソフト(EndNote/Zotero)で重複排除後、2名の研究者が独立してスクリーニングを実施します7。データ抽出シートでは、基本項目に加えRoB2ツールによるバイアス評価を記録します8。実例として、2023年の疼痛管理研究では32,000件から最終112件を選定する過程で、参考文献チェックから新規5件を追加発見しています9

品質管理ではPRISMAフロー図を作成し、各段階の除外理由を可視化します。データ統合前には抽出値のクロスチェックを実施し、不一致箇所の合意形成が必須です7。このプロセスにより、メタ分析結果の再現性と透明性が確保されます。

検索フレームワークとデータ管理戦略

システマティックレビューの成否を決める最初の関門が文献検索です。効果的なキーワード設計では、PICO要素(Population/Intervention/Comparison/Outcome)を基盤に検索式を構築します10。例えば「化学療法 AND 副作用 NOT 放射線」のようにブール演算子を活用することで、特定テーマに特化した結果が得られます。

文献検索のキーワード設定

検索戦略の最適化には、複数データベース横断検索が不可欠です。MEDLINEとEMBASEの併用で網羅性が87%向上したとする臨床研究事例が報告されています11。主要な検索要素を整理すると:

要素 具体例 演算子
対象疾患 2型糖尿病 OR
介入 メトホルミン AND
結果 HbA1c値 NOT

「PRISMA-Sガイドラインでは、検索戦略の透明性確保が強調されている」

システマティックレビュー指針2023

PRISMAフローの活用法

データ管理ではPRISMA2020フローチャートが標準ツールです。2022年の研究では、このフローを導入することで文献選定プロセスのエラー率が42%減少したと報告されています10。具体的な管理手法の比較:

手法 メリット 活用事例
自動重複排除 時間短縮78% EndNote
二重スクリーニング 誤検出防止 Covidence
データ抽出シート 再現性向上 Excelテンプレート

異なるデータベース間の統合では、Mendeleyなどのリファレンス管理ツールが有効です。特に500件を超える検索結果の処理では、自動フィルタリング機能の活用が必須となります11

主要な解析手法と統計モデルの選択

研究統合において統計モデルの選択は、結果の信頼性を決定する重要なプロセスです。効果的な分析のためには、データ特性と研究目的に応じた適切な手法を選ぶ必要があります12

固定効果モデルの特徴

固定効果モデルは、すべての研究が同一の「真の効果」を測定していると仮定します。Mantel-Haenszel法を用いた計算では、各研究の重み付けを分散の逆数で決定します12。この手法は異質性が低い場合(I²<50%)に適しており、効果の分散を最小限に抑える特徴があります。

実際の臨床研究では、研究間の条件が厳密に統制されている場合に採用されます。例えば、同一プロトコルで実施された多施設共同試験の分析で有効性が確認されています13

ランダム効果モデルの応用

ランダム効果モデルは、研究間の効果量のばらつきを明示的に考慮します。Bayesianアプローチを用いた解析では、事前分布と事後分布を組み合わせることで柔軟な推定が可能です13。Yamashinaら(2022年)の研究では、tau²=0.5874という異質性値のもとで治療効果を正確に推定することに成功しています。

両モデルの選択基準を比較すると:

  • I²>50%の場合:ランダム効果モデルを優先
  • 研究数が少ない場合:保守的な推定が必要
  • メタ回帰分析実施時:変量効果を考慮

実際の解析ではREML法が頻繁に使用され、効果量の信頼区間が広くなる傾向があります12。重み付けの再分配メカニズムを理解することが、適切な結果解釈の鍵となります。

Forest Plotの作成と解釈方法

データ統合の視覚化において、Forest Plotは研究者が複数研究の傾向を瞬時に把握するための羅針盤となります。このグラフ様式は1980年代に開発され、現在では主要な解析ソフトで標準装備されています14

図解の基本構造と読み方

横軸に効果量、縦軸に研究名を配置した構成が基本です。各研究は水平線付きの四角で表現され、四角の大きさはサンプルサイズに比例します14。中央の垂直線(通常OR=1)を基準に、信頼区間がこの線を跨ぐかどうかで統計的有意性を判断します。

具体例として、結核治療のメタ分析ではオッズ比0.57(95%CI 0.12-2.76)が報告されています6。Rコードforest.meta(m.gen, prediction=TRUE)を実行すると、tau²値やI²統計量を同時表示可能です14

加重平均と信頼区間の意味

重み付け計算では、研究の精度が高い(分散が小さい)ものほど大きな四角で表示されます。Mantel-Haenszel法では固定効果モデル、DerSimonian-Laird法では変量効果モデルを適用します6

統合結果のダイヤモンド表示では、幅が狭いほど推定精度が高いことを示します。ある疼痛管理研究では、変量効果モデル適用後0.60(95%CI 0.33-1.07)に補正され、真の効果範囲をより正確に反映しました615

要素 意味 解釈基準
四角の位置 点推定値 中央線との比較
水平線の幅 95%信頼区間 統計的有意性
ダイヤモンド 統合効果量 全体傾向

出版バイアスとトラブルシューティング

研究統合において最大の落とし穴となるのが出版バイアスです。特定の結果に偏った論文が集まることで、メタ分析の結論が歪められるリスクがあります16。特に小規模研究や統計的有意性の低いデータが除外されると、効果量が過大評価される傾向が確認されています17

ファンネルプロットの見方

効果量の分布を可視化する漏斗プロットでは、横軸に効果量、縦軸に標準誤差を配置します。理想的な対称分布では、小規模研究が上部に広く分散します16。実際の解析ではEgger検定(p=0.032)で非対称性を定量化し、Duval & Tweedie法で補正値を算出します17

バイアス指標 判定基準 対策手法
漏斗プロット非対称 視覚的評価 Trim and Fill法
Egger検定 p<0.1 感度分析
失われた研究数 Rosenthal法 灰色文献検索

未公表研究の影響と対策

臨床試験登録プラットフォーム(ClinicalTrials.gov)の分析では、登録研究の30%が最終的に未公表となる事実が明らかになりました16。このような「消失データ」に対処するため、次の戦略が有効です:

  • PROSPEROへの事前登録による透明性確保
  • 学会抄録や学位論文の体系的収集
  • 感度分析を用いた結果の頑健性検証

2021年の抗うつ薬研究では、未公表データを追加したことで効果量が0.82から0.57へ修正され、治療効果の過大評価が明らかになりました17。研究デザイン段階での網羅的検索戦略の策定が、信頼性ある結論導出の鍵となります。

倫理的配慮と参加者募集の戦略

研究倫理の実践において、プロトコル承認率83%を達成した医療機関の事例が示すように、倫理審査委員会(IRB)による事前承認が不可欠です18。被験者保護の観点から、インフォームドコンセント文書の平易な表現と多言語対応が求められます。

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倫理審査の実践フレームワーク

国際基準に準拠した審査プロセスでは、3段階のリスク評価を実施します。主要な審査項目を比較すると:

項目 ICH-GCP 国内基準
リスク最小化 等級分類 4段階評価
同意取得 電子署名可 書面必須
データ管理 クラウド保存 ローカル保存

2023年の臨床試験では、デジタル同意書導入によって脱落率が17%改善したとの報告があります。特に高齢者を対象とする研究では、説明時間を通常の1.5倍確保することが推奨されます。

参加者募集の最適戦略

効果的な募集には、多角的アプローチが有効です。地域医療機関との連携によって、対象者アクセス率が42%向上した事例が確認されています。具体的な手法:

  • SNS広告:年齢層別ターゲティング
  • 地域説明会:参加率向上の鍵
  • 紹介制度:既存参加者からの信頼獲得

米国NIHのガイドラインでは、募集広告の情報開示項目を7要素規定しています。これに準拠することで、倫理的問題発生率が65%減少することが実証されています18

研究登録と公表基準の確認

臨床研究の透明性を担保するため、国際的な登録制度が必須となっています。PROSPEROやClinicalTrials.govへの事前登録は、出版バイアス防止に直接寄与します19。2023年の調査では、登録済み研究が未登録研究に比べ成果公表率が47%高いことが判明しました。

主要な登録プラットフォームの特徴を比較すると:

プラットフォーム 対象分野 審査期間
PROSPERO システマティックレビュー 10営業日
UMIN-CTR 臨床試験 14営業日
JPRN 観察研究 7営業日

公表基準ではPRISMAガイドラインが国際標準です。特に方法論の詳細開示が求められ、2022年の分析ではガイドライン準拠論文が採択率1.8倍向上したと報告されています。

倫理審査ではSTROBE声明に基づく報告が推奨されます。CONSORTチェックリストを用いることで、無作為化試験の透明性が83%向上するデータがあります20。登録情報と最終公表内容の整合性チェックが、研究信頼性の鍵となります。

実践ガイドラインと操作マニュアルの整備

研究の質を保証するには、標準化された手順書の作成が不可欠です。標準化されたプロトコルを用いることで、異なる研究者間で結果の再現性が83%向上したデータがあります21。特に多施設共同研究では、操作手順の統一が誤差軽減に直結します。

チェックリストの作成方法

効果的なチェックリスト開発では、5段階の工程が推奨されます。まず研究目的を明確化し、PRISMAガイドラインに沿った項目を抽出します22。実際の臨床試験では、バージョン管理システムの導入で書式不整合が67%減少しました。

具体例として、2023年の免疫学研究で採用されたフォーマット:

  • 基本情報(著者/出版年)
  • デザイン特性(無作為化方法)
  • バイアス評価項目(RoB2基準)

実施上の留意点の整理

運用開始後3ヶ月間のモニタリングが重要です。ある医療機関では、デジタルプラットフォーム導入によりマニュアル更新速度が2.4倍向上しました21。特に注意すべき点:

課題 解決策 効果
バージョン不整合 クラウド同期 エラー率42%減
運用コスト 自動化ツール 時間削減58%

定期的な研修の実施が運用効率を維持します。システマティックレビューでは、3ヶ月ごとの更新チェックが推奨されています22。これらの対策により、研究の継続性と信頼性が確保されます。

質的効果と革新的メタアナリシス手法

医療分野の意思決定において、定性的要素を定量化する新たなアプローチが注目されています。質的効果モデルは数値データだけでは捉えきれない治療効果のニュアンスを可視化します23。この手法は患者のQOL評価や治療満足度分析で特に有効性が確認されています。

質的効果モデルの導入

従来の定量的解析と異なり、質的評価では研究デザインや実施状況の文脈を総合的に考慮します。大規模言語モデル(LLM)を活用した自動データ抽出技術が、無作為化比較試験の効率性を78%向上させた事例が報告されています24。具体的な適用例:

  • 治療効果の主観的評価を階層化
  • 研究間の方法論的差異を重み付け
  • 非数値データのメタ統合フレームワーク

ネットワークメタアナリシスの応用

複数治療法を同時比較するネットワークメタアナリシスでは、直接・間接比較を統合します。2023年の抗がん剤研究では、8種類の治療法を階層構造で分析し、効果順位を明確化することに成功しました25。この手法は従来のペアワイズ比較に比べ、結論の信頼性が34%向上することが実証されています。

複数研究の統合アプローチの比較

データ統合手法の選択は、研究結果の信頼性を左右する重要な判断です。個別参加者データ(IPD)と集計データ(AD)の違いを理解することで、最適な分析戦略を構築できます26

個別参加者データ(IPD)と集計データ(AD)の違い

IPDは各被験者の生データを直接分析する手法で、詳細なサブグループ解析が可能です。2021年の心血管研究では、IPDを使用することで年齢層別の治療効果差を特定できました26。主な特徴を比較すると:

項目 IPD AD
データ形式 生データ 要約値
分析柔軟性 高い 制限あり
実施コスト 高額 低コスト

ADを用いた解析では、効果量の計算が簡便ですが、個別データの情報損失が課題となります27

1段階法と2段階法の比較

統合手法の選択基準:

  • 1段階法:全データを同時モデル化(計算複雑)
  • 2段階法:要約値の統合(迅速実施可能)

神経科学分野の比較実験では、1段階法で異質性指標I²が15%低減しました26。ただし、結果の可視化には2段階法が適する場合も多いです27

実際の臨床試験では、サンプルサイズが500名以上の場合、1段階法の採用率が78%に達します26。手法選択時には研究目的とリソースを総合的に判断することが重要です。

統合結果の信頼性検証と品質評価

研究統合の最終段階では、得られた結論の頑健性を厳密に検証する必要があります。IOCV(Leave-one-out cross-validation)は個々の研究が全体結果に与える影響を評価する革新的手法で、心血管研究では効果量の変動幅を38%縮小した実績があります26

IOCVによる交差検証

具体的な実施手順では、各研究を順次除外しながら効果量を再計算します。2023年の腫瘍学研究では、1件の外れ値除外により統合オッズ比が0.72から0.81へ修正され、結果の安定性が確認されました26。検証統計量Vn=0.89(基準値>0.8)は分析手法の妥当性を示しています。

予測区間の算出と解釈

予測区間は将来研究の効果量範囲を推定します。計算式:

95%PI = 統合効果量 ± 1.96×√(τ² + SE²)

神経科学のメタ分析事例では、統合効果量0.45(95%CI 0.32-0.58)に対し、予測区間は0.11-0.79と広範囲を示し、今後の研究動向を予測可能にしました26

指標 信頼区間 予測区間
範囲 現在の推定精度 将来の予測範囲
解釈 統計的有意性 実質的意義

交差検証の限界として、研究数が10件未満の場合、推定精度が23%低下する点が指摘されています26。品質評価チェックリストでは次の5項目を必須とします:

  • 異質性指標(I²<50%)
  • 出版バイアス検証結果
  • 感度分析の実施状況

出版バイアス:ファイルドロワー問題の詳細解析

臨床試験登録プラットフォームの分析によると、登録研究の30%が未公表のままとなる事実が明らかになりました28。この「消えたデータ」はメタ分析の結論を歪め、治療効果を過大評価する主要因となります。特に小規模研究では、統計的有意性の低い結果が公表されにくい傾向が顕著です。

バイアス検出の方法

ファンネルプロットの非対称性分析が基本的な検出手法です。効果量と標準誤差の散布図において、理想的な対称分布から逸脱したパターンが問題を示唆します28。Egger回帰検定(p<0.05)を用いることで、この非対称性を統計的に定量化できます29

Rosenthalのfail-safe N法は、結果を無効化するために必要な未公表研究数を推定します。2022年の抗うつ薬研究ではN=112という値が算出され、結論の頑健性が確認されました29。具体的な対策チェックリスト:

  • 灰色文献の体系的収集(学会抄録/学位論文)
  • 感度分析による結果の安定性検証
  • PROSPEROへの事前プロトコル登録

統計ツール活用例として、Rのmetaforパッケージではtrimfill()関数でデータ補正が可能です28。実際の解析事例では、この手法適用で効果量が23%修正される結果が報告されています。

データ表と図解による総合レビュー

研究データの可視化では、情報伝達効率が解析結果の理解度を左右します。Excelを使った基本テーブル作成では、列幅調整と条件付き書式設定が必須です。データ整形の3ステップ:

詳細テーブルの作成手法

Rのtidyverseパッケージは複雑なデータ変換を自動化します。2023年の解析事例では、5000行の臨床データを3分で整形可能なことが実証されました30。主要ツール比較:

ソフト 処理速度 学習曲線
Excel 標準 緩やか
Python 高速 急勾配
EZR 中速 中間

視覚的解析ツールの利用方法

PythonのMatplotlibライブラリでは、信頼区間付きリスク比を3Dグラフで表現可能です。実際の研究では、視覚化により結果の解釈速度が78%向上した事例があります31。効果的なグラフ作成のポイント:

  • 色分け:効果量の大小を色相で区別
  • 注釈:p値とサンプルサイズを明記
  • 軸設定:対数スケールの適切な使用

データクリーニングでは、外れ値検出アルゴリズムが解析精度を向上させます。自動化ツールを導入した研究チームは、手作業時間を62%削減できました30。ツール選定チェックリスト10項目中、処理速度と可視化機能が優先度の高い要素として挙げられています31

結論

現代の研究統合において、厳格なプロトコルと透明性が質の高いエビデンスを生み出す基盤となります。効果量の可視化から出版バイアス対策まで、システマティックな手法が矛盾するデータの解釈を可能にします32。異なる分野の知見を統合する際、PRISMAガイドラインに沿ったデータ管理が結果の信頼性を担保します。

重要なのは統計モデルの選択基準と倫理的配慮のバランスです。研究登録プラットフォームの活用により、未公表データの影響を38%軽減できることが実証されています33。解析ツールの進化が複雑なデータ処理を簡素化し、効果的な意思決定を支援します。

今後の課題として、自動化技術と人間の専門判断の協働が挙げられます。チェックリストの作成やクロスチェック体制の構築が、誤解を避け れ る こと に直結します32。研究者が次世代の分析手法を活用する際、本記事で解説した原則が確かな羅針盤となるでしょう。

FAQ

システマティックレビューとメタアナリシスの違いは?

システマティックレビューは研究の体系的収集と評価を指し、メタアナリシスは統計手法を用いた複数研究の量的統合を意味します。質的統合と量的統合を組み合わせたハイブリッド型アプローチが近年増加しています。

効果量の重み付けで考慮すべき要素は?

サンプルサイズ・研究デザイン・測定精度が主要な重み付け要素です。ランダム効果モデルでは研究間の異質性を、固定効果モデルでは共通効果推定を優先します。

出版バイアスの検出方法で信頼性が高いのは?

ファンネルプロットに加え、Egger’s testやTrim and Fill法の併用が推奨されます。未公表データの収集にはPROSPERO登録が有効です。

倫理審査で特に注意すべきポイントは?

二次データ利用時の個人情報保護と原著研究の倫理承認状況の確認が重要です。参加者募集時にはインフォームドコンセントの適切な取得が必要です。

ネットワークメタアナリシスの利点とは?

直接比較データがない介入間の相対効果を推定可能です。ただし不一致性検定と階層モデルの適切な選択が結果の信頼性を担保します。

データ統合時の異質性対策として有効な手法は?

メタ回帰分析やサブグループ解析の実施が効果的です。I²統計量50%以上の場合、ランダム効果モデルの適用を推奨します。

PRISMAフローの主な活用場面は?

文献選定プロセスの透明性確保と報告漏れ防止に有効です。特に除外研究の理由記録において重要な役割を果たします。

ソースリンク

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